推薦盤 G・H・ヘンデル 組曲「水上の音楽」
※ホームページの仕様変更により「推薦盤」をNEWSに再掲いたします。
G・H・ヘンデル 組曲「水上の音楽」
【特選】
指揮:ニコラウス・アーノンクール
演奏:ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
録音:1978年
【推薦①】
指揮:ジョン・エリオット・ガーディナー
演奏:イギリス・バロック管弦楽団
録音:1980年
【推薦②】
指揮:ジョージ・セル
演奏:ロンドン交響楽団
録音:1961年
【推薦③】
指揮:カール・ミュンヒンガー
演奏:シュトゥットガルト室内管弦楽団
録音:1981年
【解説】
この曲は,弦楽合奏,オーボエ,ホルン,トランペット,フルート,リコーダーなどから編成されており,管弦楽組曲のジャンルに属する,ヘンデルの代表的な管弦楽作品です。
この曲の作曲の経緯は,ハノーファー選帝侯の宮廷楽長に就任していた際,ヘンデルに帰国命令が出ていたにも関わらず,ロンドンに定住していましたが,イギリス王がハノーファーの選帝侯に迎えられることとなり,その王と和解を図るため,ロンドンのテムズ川での王の舟遊びの際この曲を作曲・演奏したと伝えられておりますが,真意は定かではありません。
曲は当初はチェンバロ編曲版(26曲)が出版され,その後オリジナルの管弦楽曲は遺失しましたが,25曲からなるレートリッヒ版は復元したものです。この他にも管弦楽復元版は数種類存在し,20曲からなるクリュザンダー版,6曲からなるハーティ版がよく知られております。
現在の新ヘンデル全集(レートリッヒ版)によれば,曲は3つの組曲から構成されているとされていますが,現代楽器とは違い古楽器の当時では,管楽器にバルヴ構造がなかったことから,調性の関係から一度に演奏することは困難であったと考えられ,さらに現在発売されているCD(音源)についても,その収録順についてはまちまちであります。 特に,演奏効果が得られる旧ヘンデル全集(クリュザンダー版)や,CDのカップリング等による時間的な制約(特にLP時代)から,ハーティ版を採用しているものも少なくありません。
【推薦盤】
まずは特選盤ですが,古楽器演奏から,アーノンクール=ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの78年の録音をお薦めしたいと思います。
この録音は全曲録音となっており,いわゆる旧ヘンデル全集のクリュザンダー版を使用しており,非常に高い演奏効果をもたらしております。また,その演奏効果以上に驚かされるのが演奏内容で,非常に過激な表現となっており,アーノンクール節が絶好調の演奏です。
具体的には,他の演奏では見られない程のテンポ設定やアクセントの付け方,ホルンのフラッター奏法(舌を早く打つことにより効果的なトリルを演出)など,聴く者を飽きさせない内容となっております。
次に推薦盤ですが,まずは,ガーディナー=イギリス・バロック管の80年の録音を紹介しましょう。 古楽器演奏では,アーノンクールとは対照的に過激な表現はなく,一番安心して聴くことのできる演奏となっております。この曲の第3組曲は盛り上がりが欠けるため,これを解決するために旧ヘンデル全集のクリュザンダー版を使用する指揮者もおりますが,ガーディナーは新ヘンデル全集のレートリッヒ版を使用しつつも,第1組曲の後に第3組曲を持ってきて,最後に活発な第2組曲を配置する工夫などを行っております。
続いて現代楽器の演奏から,セル=ロンドン響の61年の録音をお薦めしましょう。この音源は,LP発売時から話題をさらったものですが,それは版と演奏の両方でのことです。まずは版ですが,基本はハーティ版をセル自身が手を加えたことにより,曲がまぶしいくらいに輝いており,演奏も活き活きとしたセルらしい闊達なものとなっており,セルの特徴でもあるオーケストラが引き締まった演奏で,6曲の編集版でありながら曲の魅力を十分に引き出している,非常に刺激的な名演です。なお,カップリングは王宮の花火の音楽ほかです。
最後に,現代楽器の演奏から,バロックやモーツァルトの演奏に安定感がある,ミュンヒンガー=シュトゥットガルト室内管の81年の録音をお薦めしましょう。
まずは版ですが,ミュンヒンガー自らの編集した版を使用した22曲となっており,ガーディナーと同様に第1組曲の後に第3組曲を持ってきて,最後に活発な第2組曲を配置しております。その演奏内容でありますが,過激さ,派手さとは無縁で,ミュンヒンガーらしい気品に溢れている非常に味わい深い演奏となっており,録音も上々です。なお,カップリングは王宮の花火の音楽です。
この他にも,ヴェンツィンガー=バーゼル・スコラ・カントールムの演奏やサージェント=ロイヤル・フィルの演奏も素晴らしいですし,ストコフスキーの少々変わった演奏もあります。
0コメント